会員の雑感(11)

     64: 八幡山の窪地から

広報担当の会員より技術担当とのお役目をいただいたからではありませんが、インドアにてネット(PC及びスマホ、タブレット)で遊んでいます、遊ぶと言っても既存のアプリを使い、またグーグル先生のお世話になって色々と探っているだけです。 最近、AIサイトがあっちこっち立ち上がっており、その利用を考えているのですが質問の精度というか、何を尋ねるのかがポイントのようで結構そこに頭を使っています。

つい先日も、広報担当の方が前回の活動軌跡を地図上に落とした時、何か人工的な跡がありそのことで二人盛り上がりました。(図 1) 私はその跡の探索に地図アプリを使って、「その場所は過去に山崩れがあった場所では?」と結論づけました。地元のお社に昭和40年6月20日、集中豪雨の記録があったので、その際起きた山崩れと思われます。(図 2)

その探索の際、「スーパー地形図」(図 3)と呼ばれる地図を使いました。 通常、山歩きに使っている地図は等高線で地形を表しています。 この等高線の間隔密度、形状から山の尾根・谷部を判断していました。(図 4) 因みに図3と図4は同じ曾場ヶ城山を表しています。

この地形図(スーパー地形図;スーパー地形より)は等高線で山の形状を表すのではなく、色の濃さで山の形状を表しています。(白い部分は平坦、濃い部分は傾斜がきつい等) 等高線よりより直感的に山の形状がわかります。

この地形図は国土地理院が提供しているDEM(Digital Elevation Model / 数値標高モデル)航空機からレーザ測量などで地表データを取得し、建物や樹木などを除去して地面の状態を表すデータから作成しています。 色の濃淡で地面の形状を表す地形図は、「アジア航測株式会社」が開発した手法(特許取得済)で、一般的に「赤色立体地図」と呼ばれています。(図 5)

私がこの地図を知ったのはテレビ番組で山城・遺跡の探索にこの赤色立体地図が使われていたのを見たときでした。 航空写真では樹木等で地表が覆われており、地面の形状がわかりませんがこの赤色立体地図ではっきりと人工的な跡が現れます。 マヤ文明時の遺跡発掘に航空機で計測した地表データから作成した赤色立体図で広大なジャングルの中にはっきりと現れた遺跡を見たとき驚いたのを記憶しています。

本来はアジア航測株式会社が測定したデータをもとに緻密な赤色立体図を作成するのでしょうが、国土地理院のDEMデータを使った立体図も利用出来るようです。  ただしデータが緻密ではないので大まかな立体図と思われます。 スーパー地形図は似たような処理をして立体図を作成していると思いますが赤色立体図より表現が緻密なように感じます。 その他に航空機にてデータを採取する際、赤外線等同時に計ることで、植物の分布等もわかると聞いており、目的によっていろいろな地図が有る様です。

地図で遊ぶ手段が増えて面白くなってきました。

五座六拠の赤色立体図を参考に添付しておきます。
図 6 八幡山
図 7 陣が平
図 8 鏡山
図 9 八幡山・陣が平 対 鏡山
図 10 二神山

     65: 3Dプリンタと五座六拠

世の中には3Dプリンタなるものがある。このプリンタを使えば3次元物体を”印刷”できる。このように書くと まるで鶏が卵を生むようにプリンタから3次元物体がポロリと出てくるように想像されるかも知れないが、ドラえもんの 道具ではないのでそのような魔法はない。順を追って考えよう。点(0次元)を真っ直ぐに動かすと 直線(1次元)が生成される。直線を敷き詰めると長方形(2次元)となる。そして長方形を重ねると立体(3次元)が 生み出される。3Dプリンタはこの順番に樹脂を”出力”して最終的に樹脂製の立体を完成する。したがって 出力には時間がかかる。数時間単位の時間を要すると想像願いたい。
PCに接続される通常のプリンタは2Dプリンタであるが、ここでは単にプリンタということにする。 プリンタでは印刷用紙(2次元)を予め用意し、 プリンタはインクを用紙上に噴霧して印刷を行なう(インクジェットプリンタの場合)。用紙は プリンタが出力する訳ではない。この点で全てを出力する3Dプリンタとは状況が異なる。 PCからプリンタへ送られる信号は2次元的な用紙に印刷するための、云わば2次元的なデータである。 これに対し、3Dプリンタに送る信号は3次元的でなければならない。このようなデータとして 広く用いられているのはSTL形式のデータである。したがって、3Dプリンタで出力したい 3次元物体を表現するSTLファイルというものをPCで作成すれば、所望の3次元出力を3Dプリンタに よって得ることが出来る。
SYGの活動(2週間に一度)以外にこれと言って用事のない暇人の私は最寄りの地域センターで 手伝い業務を半年程度やった。手伝い業務の中には地域センターで購入する3Dプリンタに 関してアドバイスを行なうことが含まれていた。3Dプリンタについて、原理は知っているが、実際に 使ったことはなかった。これは良い機会だと喜んで手伝い業務に携わった。その時に3Dプリンタの 価格を初めて知った。高齢者ともなると、自宅に3Dプリンタを据え付けておられる方は稀であろう。 では、3Dプリンタの価格をお教えしよう。廉価なものは5万円程度である。インターネットで 探すとこれを下回る価格のものも見つけることが出来る。広く使われているものの製品名を 書きたいところであるが、我がHPは宣伝を一切しないのでここに書くことは控える。興味の ある方はインターネットで検索なさるとすぐに見つかる。個人で使うにはこの廉価版の3Dプリンタで 十分である。大きなものを出力したいときは、パーツに分割し、小分けにして3Dプリンタで出力 し、後で組み立てれば良い。
ならば、自分でも購入すれば良いようなものだが、先の短い私は絶賛断捨離中である。通常の プリンタでさえも滅多に使わないのに、3Dプリンタなど以ての外である。このような身勝手な 老人に3Dプリンタについてアドバイスをして欲しいとは千載一遇の機会である。これを逃したら もう3Dプリンタの実物を見ることはないだろう。
地域センターに件の3Dプリンタが届いたので、早速見に行った。確かに小さい。使いかたは至極簡単で、 数ページの小さな用紙にセットアップの方法が書いてあるだけで、 必要なアプリ(スマホ用とPC用)をダウンロードするためのURLは書いてあるが、他に情報は 何もない。拍子抜けである。私が相談に乗る必要など全く無く、届いて数日のうちに、スマホを 使って3D物体のサンプル出力をされていた。サンプル出力が一通り終わったところで私の 出番である。何か面白いSTLデータはないかということになって近くの山のSTLを作成すること にした。富士山などの有名な山のSTLデータは探せばあるが、知られていない近くの山のSTLデータ などは自分で作るしかない。ここで国土地理院サイトのお世話になる。次のURLにアクセスする。
https://maps.gsi.go.jp/
そして必要な山の位置が中心に来るよう、地図を動かす。中心の位置に + のマークがあるので その下に目的の山が来るようにする。次に、右上の「ツール」メニューの中から「3D」を 選ぶ。更に、「大」、「小」、「カスタム」の選択肢の中から「カスタム」を選ぶ。すると 地図上に正方形が現れるので、必要な山が収まるように、矩形のサイズを調整する。 サイズが適正になったら「OK」を押す。暫くの処理時間の後、切り出した山の部分が 現れるとともに、下の方に4種類のファイルのダウンロードを促されるので、STLファイル を選択し、ダウンロードする。これで dem.stlという名前のSTL形式ファイルを得ることが出来る。
私が想像していた以上に、3Dプリンタは一般的になっていた。国土地理院のサイトでSTL形式ファイル を簡単に生成できるとは思ってもみなかった。世間知らずな老人である。私が常用しているQGISという アプリを使ってもSTLファイルを生成できる。2つほど必要なプラグインを入れて、 試しにやってみた。残念ながら私のPC(メインメモリ 8Gバイト)ではメモリオーバーで生成処理が 途中で止まってしまった。ここは大人しく国土地理院のサーバの力をお借りするのが良いと判断した。 地域センターで、近隣の山についての3Dモデルの出力が一段落したところで、五座六拠のSTLを 作成して、3Dプリンタで出力していただいた結果が上の図である。山の記号は私が3D出力を 撮影した後で画像に書き込んだもので、3Dプリンタ出力はあくまで白一色である(別の色の樹脂素材は ある)。なお、図の出力では高さ方向を2倍にしている。言い換えると下見五座は600メートル級の 山として表現されている。これを見て、ガガラ山は思ったより高いと感じた。

この記事に書いたが、曾場ヶ城山中腹の林道において、 私がほぼ1週間で周回する下見五座を一網打尽にしたような景色を見つけ出した。一方で、記事63に あるようにChatGPTから私の下見五座散歩は、もう暫く続けても問題ないとの助言を得た。今や 私の1週間の散歩コースは3Dプリンタの出力として私の机の上で鎮座している。なんと言う 贅沢だろうか。
もし貴方が終活の一環として断捨離を未だ実行しておられず、プラモデル作りのような工作を 続けておられるならば、3Dプリンタは導入に十分値すると思う。パソコンで、3Dプリンタに 付属するアプリを使用してSTLファイルを編集・作成し、3Dプリンタで出力して遊べば認知症の到来を はるか先まで遅延させることが期待できる。強くお勧めする。

     66: 山の特定

同時期ではないのですが、二人の会員から「あの山は〇〇なのかな?」との質問が技術班(弊職)に寄せられました。以前、山崩れの跡をネット上の地図アプリから探し出した実績を買われ、「技術班に認定していただいたからには明らかにしたい」と、再びネット上での探索を進めました。

今回のお題は、「鏡山山頂から北方向を見たとき、鷹ノ巣山は見えるか?」と、「海田の中店橋(瀬野川)たもとから東北東を見たとき、曾場ケ城山(通称:大山)が見えるか?」の二点です。

前回は Google Earth の 3D 機能を使って崩れた跡を探し出したため、今回も同じ手法を採用しました。ところが、探し出す山が観測地点から遠く、パソコンの画面では判定不能でした。

別の手法を検討するため、まずは距離の近い「中店橋~曾場ケ城山」をモデルとして検討しました。

会員からいただいた写真(図1)の赤矢印が、探す対象の山です。とりあえず Google Earth にて 3D 表示(図2)すると、同じ形の山が現れました。スマホアプリ「スーパー地形」で中店橋から見えるパノラマ展望図(図3)を確認しても、同様の形状の山が現れます。しかし、山名の表示がなく、曾場ケ城山かどうかは判別できませんでした。

Google Map で中店橋(観測地点)と曾場ケ城山が分かる地図(図4)を見ると、視線上に「坂山」という山があることが分かりました。お題の山は、この坂山である可能性が高いものの、確定には至りませんでした。

そこで、観測地点から山頂が確認できる視線角度を計算してみました。高度は地図に記載されており、水平距離については、二点の緯度・経度を入力すると自動算出される国土地理院のサイトも見つけましたが、Google Map 上で二点を設定すると水平距離が表示される機能があることが分かり、今回はそちらを使用しました。

図4より、観測地点の高さは 3 m、曾場ケ城山の高度は 606 m、水平距離は 14.44 km でした。これらの値から、三角関数を用いて視線角度を算出すると 2.4° となります。

一方、坂山は図5より高度 514 m、水平距離 6.69 km で、視線角度は 4.2° と算出されました。

以上の結果から、「観測地点からは曾場ケ城山は見えない」と結論づけられます。図1の赤矢印は、瀬野の坂山尾根筋が富士山のような形に見えているものと考えられます。

次に、「鏡山山頂から鷹ノ巣山が見えるか?」についても、同じ手法で試算しました。

「図6の赤矢印が鷹ノ巣山かどうか」が焦点です。会員からいただいたカシミール 3D によるパノラマ展望図(図7)でも判別は困難でした。スーパー地形で鏡山山頂から北側を見たパノラマ展望図(図8)では、龍王山と田房山の奥に鷹ノ巣山があることは分かりますが、実際に見えるかどうかまでは判断できません。

そこで、鏡山山頂から鷹ノ巣山方向に位置する山々を調べると、手前から田房山、虚空蔵山付近の山が存在することが分かりました(図9)。

観測地点(鏡山山頂)の高度は 335 m、鷹ノ巣山の高度は 921.7 m、距離は 18.67 km で、視線角度は 1.9° です(図10)。
田房山は高度 412 m、距離 5.39 km で、視線角度は 0.8° でした(図11)。
虚空蔵山付近の山は高度 623 m、距離 11.84 km で、視線角度は 1.4° でした(図12)。

参考として、方向は異なりますが、虚空蔵山自体は高度 665.6 m、距離 8.49 km で、視線角度は 2.2° となります(図13)。
これらの結果から、図6の赤矢印は鷹ノ巣山であり、「鏡山の山頂から北方向を見たとき、鷹ノ巣山は見える」と結論づけられます。 なお、鷹ノ巣山を視認した際の条件から推測すると、虚空蔵山付近では高度およそ 620 m 以上の部分が見えているようです。
今回も探索を大いに楽しむことができました。また、Google Map の機能が拡充されていることや、国土地理院が多様なサービスを提供していることも分かり、技術班として調査手段の幅が広がりました。
国土地理院の関連サイトは以下です。

https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/

     67: 下見五座幹線道

僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ

教科書にも出てくる、高村光太郎の「道程」の書き出しである。里山の道に即して書き換えれば、

僕の前に道はあった
僕の後ろに道は出来る
ああ、五座六拠よ

というところか。HPの冒頭にもあるように、我々SYGは嘗て存在していた山道を再生することにより、 多くの人を里山に呼び込み、里山を活性化するべく、老体に鞭打って活動している。
古道を再生しても、多くの人に歩いて頂かなければ、「僕の後ろに道は出来る」とはならない。私はSYGの中では一番 良く五座を歩いていると思うが、それでも五座それぞれについて考えると、週一程度である。完全に放置するよりは ましだが、これだけでは歩きやすい道として維持するのは難しい。力強い味方はYAMAPプレミアム会員の 方々である。全国規模でハイキングコースを歩いておられ、その足跡を、ルートと 日記とで公開しておられる。500座踏破などという勇ましい書き込みも散見される。
この記事を書く時点でYAMAPの4グループに、お会いした。鏡山では にぎやかな女性グループ(179)とすれ違った。 八幡山では本格的な山歩き姿の二人組(211) が下って来られるのとすれ違った。出会いはいつもすれ違いである。同じ方向に歩いているときは、 歩く速度が余程違わなければ抜きつ、抜かれつはあり得ない。YAMAPの方々はほとんどが一見さんであろうが、 人数が多いので山道が利用される回数は増えてくる。下見五座を整備する側としてはありがたい限りである。
YAMAPな方々は殆どがスマホを見ながら山道を歩いておられる。要所で写真を撮りながら、歩いたルートは スマホに記録され、山歩きの後にスマホのアプリを使って容易に山歩き日記を作成でき、それをYAMAPのHP に投稿されているのだと思う。あくまで私の推測である。スマホを見ながら山道を歩いているときは、恐らく モデルルートが表示され、それに沿って歩かれているのだろう。すると道に迷うこともなく、限られた時間で 多くの低山を効率よく回ることが出来る。YAMAPの方々は現役世代が多いと見受けられ、週末などを 利用して多くの低山を歩くには効率よく行動しなければならない。ほぼ無尽蔵に時間を確保できる私のような 暇人とは状況が違う。
YAMAP用モデルルートがあるかどうか確証は無いが、もし存在するとすれば、YAMAPの多くの方が同じようなルートを 歩かれるので、我が下見五座においても特定の山道が補強されることになる。上の図は私がYAMAPの記事を 参考にして推定したYAMAP御用達のお勧めルートである。陣が平山と八幡山(青い線)とガガラ山と鏡山 (黄色い線)として描いてみた。これら2つのルートはブールバールの北と南に位置する主要幹線と なっている。私は勝手にBL, YLと名付けた。では、それぞれについて道案内をする。鏡山公園を 起点にしている。
BL: 大学の池の上学生宿舎近くにブールバールを横断する地下道がある。これを抜けて西に少し歩くと 会館通りが見えてくるのでここで北方向に曲がり会館通りを、右手に陣が平山を見ながら歩く。100m程度歩くと、 山への取り付きを示すテープがあるのでそこから山道に入る。あとはみちなりに山頂に向かって 歩く。途中で被雷樹木を見ることが出来る。山頂には附属幼稚園関連設備としての山小屋があるので 必要であれば小休止し、山道を東に向かって更に歩く。幹線であるから余程のことがない限り迷うことは ない。陣が平山の東の端に近づくと右折する下山道があるので竹やぶに向けて歩く。竹やぶの中をほんの 少し歩けば八陣通りに出る。八陣通りに出たあと少し南に歩くと八幡山に入る階段が見えてくるので それを登り、八幡山の山頂に向けて歩く。陣が平山ほどではないが、多くの人が歩いていると見え、 道は明確にわかる。八幡山山頂は眺望は無いが、印象的な祠が2つあり、広場のようになっている。
YL: 鏡山公園グランドの片隅に子ども用の滑り台などがあり、そのすぐ近くに鏡山登山道(Aコース) 入口の看板がある。ここから登山を開始する。階段も整備され、立て札もあり、鏡山山頂に行くのに 迷う人はまずおられないだろう。山頂で景色を楽しんだらガガラ山方向にやや険しい、岩の多い 道を降りる。降りてしまえばあとは歩きやすい道が続くので、鏡西山などを通過して西方向に 歩く。整備された階段を降り、鏡山を離れて鏡西通りに出る。鏡西通りを少し南に歩くと ガガラ山への入口が見えてくる。なお、鏡西通りは比較的交通量が多いので、気をつけて 横断する。ガガラ山に入った後はみちなりに山頂に向かって歩く。やがて 東の峰に到着するので左折して山頂に向かう。八幡山と同じく、 山頂での眺望は無い。以前は山頂に衛星受信用の設備があって良い目印だったが これも撤去されてしまった。
BL, YLは主要幹線であり、説明の必要はほとんど無い。それぞれの 終点は実は山を楽しむためのターミナル駅のようになっている。八幡山、ガガラ山は共に 見どころが多いので、HPのメインページを参考に、冒険をして欲しい。ターミナル駅で 引き返すだけでは勿体無い。
もう一座、二神山がある。ここにはピークが3つあり、山頂、西のピーク、東のピークと 辿る道が幹線道である。これをオレンジの道、OLと名付けた。
OL: 説明を書こうとしたが、余りに明確で、何も記述する必要がない。要所に立派な階段が 設けられており、このように綺麗な隊列(120)を 組んで歩くことも可能である。
皆さんのお陰でBL, YL, OLと山道が堅固になりつつある。叶うならば、これらの幹線から少し でも踏み込んで、下見五座全体を気軽に歩ける山道として欲しい。

僕の前に道はあった
みんなのお陰で僕の後ろに道が出来た
ああ、五座六拠よ

     68: 散歩の楽しみ

年金生活者ともなると社会との接点が著しく減少する。大部分の時間を自宅で過ごすので致し方ないことであるが、 社会との関わりを失うと精神的に孤立してしまう。体力が許す限り外出することが望まれる。認知症を 予防するためには「教養教育」が必要である。では大学などで開催される市民講座に行くべきかと考えるが、 「教養教育」と書いたのはことばの遊びで、本当は「今日、用事がある」、「今日、行くところがある」、と いうことを短く表現しているのである。要するに外出の機会を増やせということだ。
SYGのメンバーは私以外は多趣味である。「教養教育」は十分のように見える。私はといえば特に高齢者サークルに 加入したり、手作業をしたりということがない。社会性、および器用さが欠如しているのだろう。そこで散歩の 登場である。散歩は一人で行うので、誰でも出来る。但し、何か自分を惹きつけるものがなければ長続きしない。 私は年金生活者になって10年も散歩を続けているので、自分を散歩に駆り立てるものは何かと雨の日の今日、 考えてみた。 暇人なので、雨で外出(=私の場合は散歩)できないときはPCの前で指が動いてしまう。
私を散歩へと導いているものは間違いなく下見五座を歩くときのセラピー効果であろう。里山を歩いていると、 嫌なこと(高齢者ともなるとほとんど無い)は霧散するし、深呼吸すれば健康寿命が少しばかり伸びるのが 実感できる。体を動かすのでラジオ体操をやるのと同じくリラックス効果がある。社会との接点は期待できないが 自然との接点は間違いなく強化される。更に、PCで文章でも書いていれば脳の活性化にも役立つだろう。
社会性については、里道を歩いているとき人間観察ができる。私が里道部分を歩く時間帯は朝の8時ころで あるので、学生諸君が授業へと急ぐ時間帯に重なる。上の地図は私の散歩コースのうちの大学に 近い部分である。ブールバールと南北に走る道路との交差点の南西部分が大学のキャンパスを描いている。青い線は ガガラ山・鏡山散歩コースと陣が平山・八幡山コースとで利用する道順を示している。図のA点に 稲荷神社があり、陣が平山・八幡山コースではここで青い線を離れ、水色の線(陣が平詳細コース、(J-1)) を辿る。ガガラ山・鏡山コースでは南下を続ける。この付近には学生用のマンションが多い。すると自動車の ナンバープレートが観察対象となる。広島ナンバーが一番多い。大学キャンパスは広島県中心部の田舎に あるので広島県内といえど、アパート住まいをせざるを得ない学生が多いからである。その他では中国・ 四国各県のナンバーがやはり多い。遠方はといえば、室蘭ナンバーの軽自動車が気になる。もう2年以上も 見ているので、そろそろ卒業か。それまでに一度は所有者に会って、全区間を運転したのか、それとも 苫小牧からフェリーに乗ったのか聞いてみたいのだが、そんなことをしたら不審者扱いだろう。忙しい 学生は暇な高齢者の相手をする暇はない。
学生の交通手段は何といっても自転車である。図でPと書いてあるのは交番の位置で、この交番のある交差点 に向かって、北から、あるいはブールバールを東から多くの学生が集まってくる。自転車に対する罰則規定が 強化されたので、流石に交番前をスマホ片手に自転車で通過する学生は見なくなった。自転車といえば、 電動付き自転車が増えてきたことが特筆に値する。電動自転車は高齢者のためのものかと思っていたが、 観察すると女子大生の半数は電動自転車を使っている。男子学生でも1/4程度は電動自転車を利用しているように 見える。世の中、変わったものである。時代を感じる。
この文章を書いているのは4月4日、新年度の始まりで、子供が心配なご父兄の姿も見られる。新入生も やがて当地での生活に慣れて来るであろう。私も学生たちを応援しながら陣が平山、あるいはガガラ山 に向かって歩く。お互い頑張ろうではないか。大学生活に慣れたら、下見五座にも足を運んで欲しい。

     69: 西方を仰ぎ見る

阿弥陀経によると極楽浄土は西方向の遥か彼方、十万億土の距離にある。十万は10の5乗、1億は10の8乗、 掛け合わせると10の13乗!これは10兆に相当する。国の予算額の数字に慣れてしまって驚きは少ないかも しれないが、容易に行くことの出来ない天文学的な数字の距離である。そもそも単位が何なのかも分からない。 私自身は極楽浄土には縁がなさそうなので、現実世界に話を戻し、我が五座六拠での最大の展望所、 鏡山山頂から極楽浄土の方向を仰ぐことにする。
記事66にあるように、広島市近郊の海田から東方向に富士山のような形をした山が見えるが、あれは 曾場ヶ城山かという疑問は「坂山」であるという決着を見た。広島市内からは安芸の小富士という山が 南に見える。すると坂山は賀茂の小富士というところか。
暇人の私にはすぐに新たな疑問が湧いてくる。鏡山山頂から賀茂の小富士は見えるだろうか?何度も 技術班のお手を煩わせる訳にはいかないので私自身でやってみることにした。私の使える道具は カシミール3Dだけである。カシミール3Dの中にあるカシバードという眺望作成機能を使って 鏡山山頂から西方向を見たときのシミュレーション結果が図1である。270と赤で書いてあるのが真西(極楽浄土方向) だ。鏡山の西方向は実に美しい。目を引くのは何と言っても槌山である。これこそ小富士と呼ぶに ふさわしい。賀茂の小富士は使ってしまったので東広島の小富士とでも呼ぼうか。嘗て曾場ヶ城山に山城 が築城されていたが、高さが600メートル以上あり、使い勝手が悪い(麓から通勤するのがたいへんだったのか、 物資を搬入するのが難しかったのかは知らない)ので、この槌山に山城を移したそうである。高さは488メートル と国土地理院地図にはある。覚えやすい数字だ。槌山から笹が峠を挟んで、水丸山(659.8メートル)が見える。 当地での言い伝えでは水丸山の上に雲が出たら雨になるとのこと、天気は西からである。
槌山、水丸山に挟まれてほぼ真西に、形は富士山らしくないが山が見える。地図には無いので仮にWM(West Mountain) と名付けてみた。図2にWMの位置を示している。大変に惜しい、坂山のすぐ近くである。もう少しで 賀茂の小富士が見えるところだった。図1に戻ると賀茂の小富士は槌山(東広島の小富士)とほぼ同じ方向に あることがわかる。何という一致だろう。鏡山の極楽浄土方向には小富士が2つもある。

暇に任せてこのような他愛もない遊びをする私は、極楽浄土に行く必要は無い(行けない)と知った。

     70: 坂山を臨む

前回の探索で話題になっている瀬野の坂山ですが、ある会員から東広島目線での問い合わせが来ました。お題は「鏡山と坂山との関係は添付資料(図1)のように大変微妙です。鏡山から坂山は見えないという結論です。 別方向から判定を出してください。」

結構ややこしいお題です。前回の瀬野川河口近く平野部から見上げての判定と違って、今回は東広島の盆地内にある標高335mの鏡山山頂から山越しに坂山付近の標高514m部(仮に坂山西峰とします)が見えるかの判定です。 今までのやり方のハイブリッド版になりそうな予感がします。

会員から送られてきた資料(図1)より、坂山西峰の前に同じ高さの山があることがわかります。まずその山の特定から進めていきました。


図2が鏡山から坂山西峰間の地図です。鏡山から坂山西峰までの視線にあたる線を赤線で表しました。その赤線上に坂山西峰手前に高い山があるのがわかります。

その地域を拡大したのが図3です。この地図から、坂山西峰と同じ高さの山があることがわかりました。その地点をAとします。地点Aから西側にもう一つ頂上らしい地点が見つかりました、その地点をBとします。 鏡山山頂、地点A/Bと坂山西峰(参考のため坂山も追加)の地図上のデータを集め前回と同じ視線角度をまず確認しました。 (計算結果1より)

この結果から鏡山から坂山西峰の視線角度(見上げる角度)は0.9度、地点Aの視線角度は1.1度。

これは、「鏡山から坂山西峰は見えない」と言う結論です。ちなみに、地点Bの視線角度は0.4ですから当然、地点Aの陰になっていますので追加検討は不要と思います。

ここからハイブリット版ですが、鏡山から見て坂山西峰は地点Aの陰になっているのですが視線角度差がわずかでもあり集合写真で後ろの人が横にずれて写る様に坂山西峰がずれているかどうか調べてみました。

両地点の緯度経度から鏡山から見て方位角(水平のずれ角度)を求めてみました。

その結果が計算結果1の右端欄です。

鏡山から見た坂山西峰と地点Aの方位角度差は0.3537度です。つまり、坂山西峰は地点Aの北側56mの位置に見えるという結果です。(計算結果2より)

地点Aより北側56mの位置にある山(尾根)の高度を調べて視線角度を計算すればより正確な判定ができます。 Google Mapから地点Aから北側に約60mの位置にある尾根を探すと地点Cが見つかりました。 地点Cの高度は500mです。

この地点Cの緯度経度と高度から再度鏡山から見た視線角度と方位角を計算しました。(計算結果3) 計算結果から、鏡山から見て地点Cは坂山西峰と同じー179.5度、視線角度は1.1度でやはり坂山西峰は陰になって見えないという結論を得ました。

世の中には親切な方が多く、二点間の緯度経度から方位角、距離を計算するエクセルファイルを公開しておられます。ありがたい限りです。

元の場所に戻ります。